本小松石の特徴
本小松石(ほんこまついし)は、日本で採れる石材の最高級品の一つとして、とても有名な石です。香川県産の庵治石(あじいし)と並んで、この2つの石を、日本が誇る高級ブランド墓石材として 「東の横綱、本小松(ほんこまつ) 、西の横綱、庵治石 」などと呼ばれています。
神奈川県の真鶴町で採石される、非常に希少性の高い石です。約40万年前に箱根火山が噴火し、そのときに流れ出た溶岩が海に押し出され、急速に固まってできました。地質学上は、輝石安山岩(きせきあんざんがん)に分類されます。
本小松石は、マグマが地中でゆっくりと固まってできた「花崗岩」とは違い、地表に流れだしたマグマが急激に冷やされて固まった「安山岩」です。つまり、すでに分裂した形で固まっているため、大きい石もあれば小さな石もあり、われわれ人間が石の大きさをコントロールすることはできません。掘り出される地層によっても、1つ1つの石によって、色や密度がすべて異なることから、同じ本小松石でも、石の表情はそれぞれ全く違うものになります。
本小松石というと、温かみのある緑系の色合いを思い浮かべる方が多いかと思います。しかし、山から掘り出されたときの石は、表面が酸化して茶褐色になっているのです。石を研磨すると、わずかに緑がかった、淡い艶を持つ灰色の石面が表れ、さらに磨くことによって、灰色から淡灰緑色のきめ細やかな美しい石肌が表れてきます。
本小松石【特級 青】
【1級 青シマ】
【灰グレー】
【赤】
色合いによって青色・灰色・赤色の3つに分類され、わずかに緑がかった青色が一番高価であるとされています。このように、切り出したときの状態と、磨いた後に見せる美しい輝いた状態のように、全く異なる2つの表情を持つ石材は他にはなく、本小松石ならではの特徴と言えます。
さらに、本小松石の大きな特徴として、年月を経ることによって、色彩が変化することが挙げられます。何十年、何百年と時が経つうちに、少しずつ風合いが増して変化し、味がでてくるのです。「歳を重ねるごとに変化する、生きている石」として、わびさびを感じられる石として人気があるのにも理由にも納得がいくことでしょう。
本小松石は、耐久性や耐火性に優れていること、粘り気が強くて石が欠けにくいこと、きめ細かな石目が美しく、独特の風合いを持っていることなどから、古くから現在まで、墓石として愛用されています。
本小松石が推奨される要素のひとつとして、長年にわたって使用され、愛され続けてきた実績のある石だということも含まれています。古くは奈良時代からその使用が確認されており、多くの歴史上の偉人のお墓として用いられてきたほか、自然石で形のよいものは、庭石、記念碑、モニュメント工芸製品に使われています。大正天皇や昭和天皇の両陛下のお墓にも使用されていることでも有名です。
このように、本小松石は、歴史を刻み続ける由緒ある石であり、日本を代表する石材のひとつであります。
本小松石の価格
本小松石の価格は、本小松石が神奈川県の真鶴町でしか採掘されないこと、石の産出量が少ないこと、また色や模様あわせなどの難易度が高いことから、高価なものになります。産出量が豊富な、中国やインドなどの石材に比べて、国産の石材の多くは、採掘場所が限られており、産出量が少ないことから、輸入石材に比べると、値段が高くなります。また、採掘する人件費も、日本は高いですので、石材自体の価格に反映しています。それに加えて、本小松石の場合は、墓石として組み立てる際に、色合わせと模様合わせが難しい石であることも、値段が高くなる一因となっているのです。本小松石は、小松山の同じ層から採石しても、色や石の模様が同じものは1つとして存在しません。切り出してから、表面を磨いてみると、青みを帯びたものや、赤みがあるものなど、すべて異なっているため、色合わせが大変困難な石です。そのため、1セットの墓石に仕上げるためには、墓石を構成する棹・上台・中台・芝台などの製品部材をたくさん作ったり、場合によってはストックしておき、石の色や模様が近い部材を組み合わせなければなりません。たくさんの石の中から、厳選した部材を使用して墓石を作りあげなければならず、長い時間と手間がかかるため、一般的な石材、外国産の石材と比べると、どうしても価格も高くなってしまいます。しかし、それだけの苦労があるからこそ、本小松石で建立されたお墓は、納得がいく、後々まで愛着がわくものとなるのではないかとも思います。また、江戸時代に、江戸城の石垣の建設や江戸の町づくりのために、本小松石がたくさん採掘されたことで、現在、真鶴町の採石場には、大きな塊の石はわずかしか残っていません。そのため、大きめのお墓を建てるような場合も、墓石の価格は、より高価になります。
本小松石の光沢のある美しさ、わびさびを感じられる趣のある様子に魅了され、本小松石でお墓を建てたいという方が多くいらっしゃいます。しかし本小松石は、色合わせ等を含め、扱いが難しい石材ですし、先ほどお伝えしたように、専門的に扱っている石材店ではないと、高品質なお墓を作りにくいという特徴があります。よいお墓を納得してお作りいただくためにも、少し早目の段階で、ご相談をいただき、時間を掛けながら製作していくことが、より安定した品質のお墓づくりにつながるのかなと思います。
本小松石の墓石
本小松石は、日本人好みの渋い色合いで人気が高く、古くから墓石として使用されてきました。岐阜県にあるお寺で、1200年前の本小松石の墓石が発見されたことから、奈良時代には、本小松石が石材として使用され、遠方へ輸送も行われていたことが分かっています。
鎌倉時代には、源頼朝はじめ、源氏や北条一族などが本小松石でお墓を建てました。そして、北条氏が、本小松石の石材業を保護奨励したことで、墓石としてだけでなく、鎌倉にある鶴岡八幡宮の大改修、小田原城の築城や補修などの大規模な工事にも、本小松石が使われました。江戸時代には、徳川家ならびに多くの幕府要人のお墓が、本小松石を使用して建てられました。さらに、和歌山県にある高野山奥の院では、徳川家が、本小松石を奥の院まで船で運び、織田信長、豊臣秀吉、武田信玄、明智光秀、石田三成、春日局といった、歴史上の偉人のお墓を建立しました。
現代にいたっても、著名人が、本小松石を墓石として用いており、永井荷風、水野忠邦、志賀直哉、犬養毅、乃木稀輔、東条英機、小泉八雲、力道山、美空ひばり、勝新太郎、長嶋茂雄などの名前が挙げられます。大正・昭和天皇の御陵でも本小松石が使用されているなど、本小松石は、日本の歴史を刻み続ける由緒ある銘石です。
本小松石は、石の模様の流れが美しいのが特徴で、「青目材(特級品)」、「青目材(縞入り)」、「グレー材」、「赤目材」の4種類に大別されます。特級品の青目材は、わずかに緑がかった灰色をしており、大変高級感があります。青目材の中でも、芯に近い部分は、「石質が硬い」、「粘り気も強く欠けにくい」、「色が変化しにくい」という利点があり、最高の品質を誇っています。
墓碑や墓石を建てる場合は、「青目材」がもちろんおすすめですが、「青目材」は、本小松石の中でも、特に希少価値が高く、高額になります。一方、「青目材(縞入り)」や「グレー材」や「赤目材」は、青目材よりも、求めやすいため、外柵で利用されることがよくあります。
石の模様の流れが同じものは2つとないところも、本小松石の特徴です。そのため、模様や色合わせが大変難しく、色を揃えた墓石は高額になりますし、特に緑色の最高級品(青目材)の色合わせは、希少です。本小松石特有の「色み」や「模様の流れ」を見極められる職人が責任をもって製作をしないと、せっかく本小松石を使用してお墓を建てても、本小松石の良さが出ない墓石となってしまいます。
本小松石の墓石を選ぶ際には、石材店に赴いて話を聞き、本小松石の事情に詳しい、実績と経験のある石材店に依頼することが重要だと思います。
当店では、「本小松石でお墓を建てたい」とお考えの方がより安心してご検討になれるように、工場見学も受付けております。ぜひ、お越しになられて、本小松石について、より詳しくご存知いただければと思っております。
本小松石の吸水率
高級墓石材として知られる本小松石ですが、古くは奈良時代から使用されていたという記録が残っています。その後、鎌倉時代になると、源頼朝のお墓や、北条家一族のお墓にも使われました。天皇家のお墓にも、伝統的に本小松石が用いられていることは有名です。
ところで通常、お墓に使用する石は、色が変化しないという面を重視し、水を吸いにくい石が用いられることが増えてきました。しかし、安山岩である本小松石は、墓石によく使用される花崗岩(一般的にみかげ石と呼ばれる石材)に比べて、吸収率が高い石です。それなのになぜ、本小松石は「最高級の石材」として人気が高いのでしょうか?
それは、本小松石が、時間の経過と共に、色合いが変化するという特徴を持つ石であるからです。風化と考えると石が古くなることですから、悪いこと、望ましくないことと思われがちです。しかし、年数とともに、本小松石の表面を見てみると、帯のような美しい模様が現れてきます。まるで生きているかのような、味わい深い変化を見せてくれる、個性豊かな石であることから、本小松石には他の石とは違う素晴らしさがあると思うのです。年数を重ねるごとに味わいを増す本小松石の様子をご覧になれば、風化を美しさと捉える、私たち日本人としての価値観、そして最高石材のひとつと呼ばれる理由に納得できることでしょう。
一般的に、吸収率が高い石は、ひびが入りやすく、割れや欠けが発生しやすいと言われています。しかし、本小松石の場合は、安山岩でありながらも、硬い石材であり、耐久性や耐火性に優れています。江戸城などの巨城の石垣も、この本小松石によって作られており、500年を経た今もなお、昔のままの姿を保っている事からも、いかに本小松石が耐久性に優れているのかが想像できますね。
また本小松石は、花崗岩などと比べると、粘り気が強いため、細かな細工を施しやすく、また長い年月にわたって、その状態を維持できるという特徴があります。
しかし、切削や研磨など、加工自体に難しい面があること。さらに、石の内部にある緑がかった美しい灰色の色調を出すのには、熟練の技が必要となること。そして、加工技術のほかにも、年月とともに、本小松石特有の石の模様や色味がどのように変化していくのかを予測できる、専門的な知識と経験を要します。
ですので、本小松石の性質を十分に理解している石材店でないと、品質の良い本小松石のお墓を製作することが難しい、というのが本小松石の大きな特徴かもしれません。
本小松石の良い面だけでなく、あえてマイナスと思われる可能性がある部分も事前に知っておいていただきたいのです。そして、しっかりとお考えいただくにあたって、何か疑問に思うこと、もっとお知りになりたいことがあれば、ぜひ、お気軽にご相談ください。